認定NPO法人 幼い難民を考える会
home menu
認定NPO法人 幼い難民を考える会 caring for young refugees / CYR
CYRカンボジア
お問い合わせ
    新型コロナウィルスの感染拡大が世界的な大流行になってから1年余り。カンボジアでも、2020年3月16日以降、人の移動や経済活動を制限する宣言がたびたび出され、学校も一斉休校になるなど、学校教育にも影響が及んでいます。
CYK/CYRが支援する「村の幼稚園」も、3月17日から閉園となり現在に至っています。その間、幼稚園で保育活動ができたのは、一時的に再開した9月中旬から11月までの2カ月半程だけで、その際も、登園人数を曜日ごとに決めて子供の人数を減らしていました。
しかし、このような厳しい状況においても、「村の幼稚園」の保育者たちは、子どもたちに質の高い保育を提供できるよう努力を続けています。
そこで今回は、コンポンチュナン州のコンポンバースロウ村、ピアムポペッチ村、バーップノム村、プロスネップ村の幼稚園の保育者へのインタビューから、コロナ禍における保育活動について、保護者や子どもたちの声も交えながら紹介いたします。

家庭での学びをサポート


PrS-Children is singing a song.jpg 「村の幼稚園」は、園内での活動ができなくなって以降、家庭での保育を行なっています。
保育者たちはまず、保護者に対して、コロナ感染予防のために石鹸で手を洗うことや人との距離を保つことを伝え、子どもたちの衛生環境を整え、健康を守るよう促しました。
学びについては、教材を各家庭に配布して、保護者が子どもたちの学習を助けるという体制をとっています。
教材は、文字や数字の練習、それに関連した塗り絵など、これまでに幼稚園で学んできた内容が中心ではありますが、3歳、4歳、5歳と年齢別のものを新たに用意し、保護者が子どもたちに教えやすいよう工夫を凝らしています。
母親が教材に沿って子供に1対1で教える場合もあれば、近所の家庭が集まって少人数のグループを作って一緒に勉強をする場合もあります。

211676477_143713044504917_5974868207989144989_n.jpg




保育者は、そうした家庭学習を支えるべく、各家庭をまわって教材を開いて示しながら、子どもたちの学びをサポートしています。

また、休園中でも幼稚園に出勤し、掃除や教材の準備をしたりと、忙しい毎日を送っています。
家庭を訪問する際には、雨で地面がぬかるんで滑ってしまったり、放し飼いの犬に吠えられてなかなか入れなかったりというような小さなハードルもありますが、屈することなく活動を続けています。
このような状況について、プロスネップ村の先生は、「私たち保育者が出向いて家庭学習のサポートをするのは、それほど難しくないです。もしもこれがオンラインだったら、保護者の中にはスマートフォンを持っていない方もいますし、もっと難しかったでしょう」と仰っていました。

保護者たちの声


 家庭学習に協力している保護者たちからは、「先生が作ってくれた教材に従って、ある程度子どもたちに教えることができるので、もう少し続けて頑張ってみます」といった声や、「教材があるので私たちもそこそこ教えることができるけれど、幼稚園で先生がやってくれるように、いろいろ発展させることはできません。
もし幼稚園が閉園になっていなかったら、子どもたちはもっとたくさんできるようになっていたと思います」などという声が聞かれました。

子どもたちの声


日中40度近くにまで気温が上がるカンボジア。
子どもたちは、それぞれの生活環境に合わせて、できるだけ涼しい場所を選んで勉強に取り組んでいます。
たとえば、村々では高床式の家が多くありますが、風の通る涼しい床下に「クレー」と呼ばれる寝台のような台が置かれています。
子どもたちはそこに上がって座り、教材を広げて文字を書いたり塗り絵をしたり、先生のお話を聞いたりしています。
TH-Children are happy to writh the letter and color the picture.jpg
また、庭の木陰に置かれた机で取り組む子どもたちもいます。
そんな子どもたちですが、母親と一緒に学習できるのが新鮮という気持ちがある一方、早く幼稚園に行きたいという声が多く聞かれます。
サポートに来てくれた先生に向かって、「先生、いつになったら幼稚園で勉強することができるようになるの」と尋ねたり、「お父さんやお母さんと勉強するのもいいけど、でも、幼稚園で勉強するほどには楽しくないなぁ」とか、「幼稚園の方が楽しいよ。だって、幼稚園だったらお友達や先生がいて、一緒に勉強したり遊んだりできるもの」などと話しているそうです。

心配していること


このように、保護者も子どもたちも幼稚園の再開を待ち望んでいますが、社会状況は依然として厳しいというのが現状です。
新型コロナウィルスの感染拡大はなかなか収まらず、「村の幼稚園」でも感染者が出たという情報があります。
ピアムポペッチ村では、プノンペンに働きに出ていた村人がコロナ禍で村に戻ってきたところ、最近になって感染が疑われたそうです。
ワクチン接種のためにプノンペンの病院に行ったのですが、その医師がウィルスに感染していたとのことでした。
また、バーップノム村では、保護者を含め計2名が感染し、村人たちは、村内で感染が広がることを恐れながら生活していると言います。
また、同村では、コロナ禍で職を失った世帯が6件あり、収入がなくなり生活が苦しい中で、子どもたちの家庭学習を支えなければならない家庭も出ています。
また、休園が長引き、子どもたちの家で過ごす時間が多くなっていることについて、保育者たちからは、「家にいると、勉強よりも、親のスマートフォンを見たり、遊んだりする時間が多くなってしまうのでは」、「子どもたちが勉強を忘れてしまい、小学校に上がるまでに身に着けるべきことを十分にできないのでは」といった心配の声や、「人との距離を保つようにと伝えても、子どもたちにはそれがなかなか難しいですから、新型コロナウィルスに感染してしまうのではないか」という懸念も聞かれました。
このように、保育者たちは、社会状況や子供の成長について案じていますが、そうした心配を胸にしまって、子どもたちや保護者たちと笑顔で接して頑張っています。

場と人


長期にわたる休園のなかで、幼稚園という場が子どもたちの学びにとって非常に大事な環境であることが、保育者、子どもたち、保護者それぞれの声を通して見えてきます。
子どもたちが集える環境は、家での過ごし方と「社会」での過ごし方という切り替えができますし、勉強はもちろん、たくさんの友達や先生と交流することで、人間関係の大切さを経験を通して学んでいくことができます。
しかし、コロナ禍という抗しがたい事態のなかで家庭学習を試み、保育者や保護者の頑張りや協力に支えられながら、子どもたちが笑顔で学び続けている様子を見ていると、環境はもちろん、保育者や保護者をはじめ、子どもたちに温かい眼差しを向け、成長を支えていこうとする「人」の存在がなによりも大切なのだと感じさせられます。

〒110-0016 東京都台東区台東1-12-11 青木ビル3B TEL.03-6803-2015 

Copyright © CYR., All Rights Reserved.