認定NPO法人 幼い難民を考える会
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認定NPO法人 幼い難民を考える会 caring for young refugees / CYR
CYRカンボジア
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写真1.jpg   皆様のご支援のもとで2017年1月から開始した、「村の幼稚園」での補助給食、ゆでたまごの提供も、今年で4年目となりました。開始直後の様子は、2017年3月発行のニュースレター『こどもたちの明日』120号でお知らせいたしましたが、今回は、活動のこれからについても見据えながら、昨今の子どもたちの様子や補助給食のありかたについて報告させていただきたいと思います。
  「村の幼稚園」は半日保育なので昼食は出ませんが、子どもたちが帰路につく前に軽食を提供しています。それを補助給食と呼んでおり、現在、CYR /CYKが支援している「村の幼稚園」の7か所で、実施されています。クッキーのようなお菓子は毎日、そのほかに、ゆでたまごが月に2回、豆乳も月に2回、それぞれ隔週で配られます。クッキーは、プノンペンにある「リリー」と「サクラ」という会社の、日本の製法に倣って糖分控えめに作られた製品を、CYKの職員が購入して、それぞれの「村の幼稚園」に定期的に渡しています。毎日配るものなので、4つのフレーバーを用意して、子どもたちに日替わりでいろいろな味を楽しんでもらっています。豆乳も、甘さの少ないものをCYKの職員がプノンペンで購入して渡しています。
  そして、ゆでたまごですが、こちらは、「村の幼稚園」の保育者が、子どもたちの人数分の卵を地域の市場で購入し、自宅で茹でて用意しています。食用の卵というと日本ではニワトリの卵が一般的ですが、カンボジアでは、現在、アヒルの卵が多く食べられています。鶏卵よりも価格が安いことも需要が増えた一つの理由ですが、保育者たちの見解によると、どちらもタンパク質が豊富で、子どもの身体の発育を促したり、メンタルヘルスを助けたり、目に良いなどと考えられています。
  そのアヒルの卵を子どもたちに配るために、幼稚園によって多少の違いはありますが、保育者一人でおよそ30人分の数を購入します。カンボジアでは学校や役所などの始まる時間が日本よりも早く、たいていは朝7時からスタートします。「村の幼稚園」も同様に、朝7時に始業しますが、ゆでたまごを用意する日は、保育者は朝5時から準備するそうです。また、カンボジアでは、ゆでたまごに塩胡椒や醤油をつけて食べられることがよくありますが、中には、塩と胡椒を臼で叩いて粉状にして持っていく保育者もいるほどです。
  このゆでたまご、授業が終わった後に、教室内の椅子に座って、あるいは、外で茣蓙を敷いて、子どもたちみんなで一緒に食べられています。ゆでたまごを配る日は、保育者は早朝から少し忙しいですが、子どもたちにとっても特別な一日のようです。コンポンチュナン州のバックプノム幼稚園ではこんなことがありました。ある園児が、ゆでたまごをもっと食べたくて、他の子と取りあってしまいました。その時、保育者が「家に着いたら、あなたのお母さんがまた卵を茹でて食べさせてくれるからね」と言ったら、子どもたちが理解してくれて、その場が和み、笑顔になったそうです。同じくコンポンチュナン州のトゥックホート幼稚園でも、やはり、卵が大好きだからもう一つ食べたいという園児の声がたくさん聞かれるといいます。ゆでたまごをはじめとする補助給食が、子どもたちの通園を促すことにもつながっています。たとえば、同州のコンポンバースロゥタボーン幼稚園では、授業が終わって、みんなで椅子に腰かけて卵の殻をむいて食べているとき、次のように話してくれた男の子がいました。「僕は毎日学校に来たいんだ。だって、お菓子やたまごや豆乳を食べられるし、文字を覚えることができるし、それに、遊具がたくさんあるんだもの」。この語りから、子どもたちにとって「村の幼稚園」が、日常に彩を与え、自分たちの成長を支えてくれる、かけがえのない場所になっていることが感じ取れます。写真からも分かるように、子どもたちは真剣な面持ちで卵の殻をむき、笑顔で頬張っています。美味しいものを食べられるというのはもちろんですが、この「村の幼稚園」という学びの場でみんなで一緒に食べるということが、子どもたちを笑顔にしているように思います。保育者たちにとっても、子どもたちの嬉しそうな表情や弾んだ会話を見聞きすることが、保育の活力にもなっているようです。
  さて、「村の幼稚園」は、CYKが3年間支援したあと、村が自主運営する地域幼稚園となります。その際に、補助給食が続けられるか、途絶えてしまうかは、幼稚園によって異なります。2021年3月に支援が終了し、自主運営へと移行したコンポンチュナン州のプロスナップ幼稚園では、支援終了後も、主体的にゆでたまごの提供が続けられています。活動を支えているのは、保育者であるマーチ・パウ先生と、子どもの保護者たちです。CYKが支援していた頃から「村の幼稚園」の運営のために、保護者たちが1ヶ月あたり4,000リエルの協力金を出し合ってきましたが、自主運営するようになって、10,000リエルも提供してくれるようになったのです。それは、保育に対するパウ先生の熱心な姿勢や取り組みに、保護者が共感し、信頼を寄せているからこその結果です。カンボジアの村落社会では、人々が村を挙げて取り組む仏教行事やインフラ整備などにおいても、それらの活動をまとめる人物が地域コミュニティーと良い関係を築けているかどうかが重要となりますが、プロスナップ幼稚園における補助給食の例からも、保育者とコミュニティーの透明性のある良好な関係がうかがえます。
  それからもちろん、子どもたちが保育者を敬愛しているということも欠かせません。パウ先生のお話しでは、ゆでたまごの提供を始めた頃、園児の中に、白身しか食べない子がいたそうです。しかし、先生が、黄身にとても栄養があることを伝えると、それからは黄身も全て食べられるようになったと言います。また、先に取り上げたコンポンバースロゥタボーン幼稚園の例と同じように、「1ヶ月に2回しかゆでたまごがもらえなくても、ずっと勉強しにきたい」と先生に話しにくる園児もいるそうです。保護者たちも、幼稚園で教育を受けられるのみならず、子どもにゆでたまごが配られることを喜んでいます。こんなエピソードもあります。ある園児が、親の用事で幼稚園を休まなければならないと言われたとき、親に向かって、休むことを拒んだそうです。なぜなら、その日はゆでたまごが配られる日で、前日にパウ先生が、「明日はゆでたまごが配られますよ。毎日みなさんが学びに来られる学校を整えてくれたCYKに感謝の気持ちも伝えましょうね」と話していたのを覚えていたのだといいます。保育者の言葉に耳を傾け行動しようとする姿勢には、ゆでたまごが食べたいというだけではなく、保育者への愛着と信頼が感じとれます。このような子どもたちを通して、保護者も、保育者と幼稚園への信頼を深めていっているのかもしれません。
プロスナップ幼稚園では、自主運営に移行してから、朝、子どもたちが登園してきた時にゆでたまごを配り、教室で座って食べてもらっています。そして、朝ごはんを食べずにやってきた子どもたちの朝食にもなるようにと、米飯と塩胡椒、醤油などのつけだれも用意して、子どもたちの好みに合わせて食べてもらっているそうです。パウ先生のもとで、プロスナップ幼稚園における補助給食の取り組みが、これからも続けられていくことを期待したいと思います。
  最後に、CYR /CYKが支援する補助給食のこれからについてお話しします。昨今は、「村の幼稚園」の近隣に駄菓子屋のような商店が増え、子どもが親からもらったお小遣いで、休憩時間に甘いお菓子を買って食べることが増えています。それは幼稚園に限ったことではなく、カンボジアの食事情全般に言えることですが、経済発展とともに、国内外を問わず物の流れが活発になり、安価で手軽に食べられる食品が巷に溢れるようになりました。それと並行して、人々の働き方も変わり、それまで食事やお菓子を一から手作りしてきた女性たちも、工場や会社などへ働きに出るケースが多くなり、手間暇かけずに市販の製品を購入するようになりました。なかには、朝から夕方まで働きづめで家に戻れず、子どもたちの食事を準備できない家庭もあります。そうした場合にはとにかく空腹を満たすためにお菓子を食べるという意味合いもありますが、子どもたちが喜ぶので、親は毎日のようにお小遣いを渡してしまいます。
  このような状況のなかで、ここ10年くらいの間に、子どもが日常的に口にする食品や栄養事情も変わってきています。とくに、糖分の取りすぎが懸念されています。そこで、「村の保育園」では、CYKの保育調整員が、いも類、とうもろこし、かぼちゃを茹でたものや、パック詰めされて常温保存可能なタイプの牛乳など、糖分に配慮した補助給食を提供できないか、検討しています。また、小学校の敷地にある「村の幼稚園」では、小学校で提供されている給食を、幼稚園でも出してもらうことも考えています。これまでは、子どもたちのエネルギー不足や空腹を補うというニーズに応える形で活動を展開してきましたが、これからはさらに、糖分の過剰摂取にならないよう、子どもたちの健康を守ることも重視しながら支援をしていく方針です。

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