認定NPO法人 幼い難民を考える会
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認定NPO法人 幼い難民を考える会 caring for young refugees / CYR
CYRカンボジア
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  皆さまのご支援のもと、「みんなで布チョッキン」が始まってから15年となりました。 布チョッキンは、使わなくなった布を型紙に沿って切り、寄付金とともにカンボジアに送る活動です。皆さまに切って頂いている布が、カンボジアの縫製者の手によってボールや人形となり、保育所や幼稚園の子どもたちのもとに届き、遊具として大変喜ばれています。ボールは、色柄や素材が様々な五角形の布を12枚1組にし、子どもたちが遊んでもほつれないように、返し縫いでしっかりと縫い付けられます。人形は、顔の表情、綿の詰め具合、洋服の色柄や髪の毛のスタイルを考えるなど、細かな作業を経て作られています。ボールも人形も、一つとして同じものはない、手作りの温かみが感じられる遊具です。『子どもたちの明日』131号(2021年6月発行)では、コンポンチュナン州のクロプープル村、コンポンバースロウトゥボーン村、プロスネップ村、チョー村の4つの「村の幼稚園」で、ボールの縫製をしている保護者や保育士たちへのインタビューを通して、縫っている時の様子について、子どもたちとの微笑ましいやり取りも含めてお伝えしています。今回は、コンポンバースロウトゥボーン村、プロスネップ村、そして同じくコンポンチュナン州にあるペアムポペッチ村の幼稚園の保育士の方々からお話を聞き、子どもたちがボールや人形をどのように使って遊んでいるかについて報告させていただきたいと思います。

布ボール・人形の遊び方
  遊具は、保育者たちが保育研修で使い方を学んだあと、幼稚園に配られています。子どもたちは、教室に置かれた布ボールや人形を見つけると、「とってもきれいなボール!小さいのもあるし大きいのもある!」、「お友達と一緒に楽しくボールで遊べるね。嬉しいな」、「かわいい人形がある!女の子もいるし男の子もいる!」などと、友達と一緒に声を弾ませています。ボールや人形は、CYK/CYRから贈られた棚に置かれており、授業の合間の休憩時間に、子どもたちが思い思い手に取って、自由に遊ぶことができます。
  また、保育者が工夫を凝らして授業に取り入れてもいます。たとえば、ボールは、クラスの友達とパスしあったり籠にめがけて投げたりするなどの身体運動に役立っています。パスをするときには、子どもたちが列になって、前から後ろへと頭の上でボールを送ったり、脚の間を通したり、身体の左右からボールを出したりと、ゲーム感覚で遊ぶこともあります
IMG_Cloth ball playing.jpg また、ボールを並べて物売りごっこをし、お友達と「品物」を交換したり、次々とボールの数を数えたりするなど、子どもたちが自身で遊びを考えながら楽しんでもいます。
  人形は、保育者が、おとぎ話の登場人物に見立ててストーリーテリングをしたり、人形を用いて男の子と女の子の違いを説明したりします。それをとても興味深そうに見入っている子どもたちの姿が印象的です。 IMG_Teacher asked children to recognize boy and girl by using cloth doll.jpg また、幼稚園では、「良い習慣について学ぶ時間」が設けられていて、その際に、人形の服を脱がせて水浴びをする真似をしたり、歯を磨いたり服を着せたりすることを通して、子どもたちが健やかに毎日を過ごす生活習慣を学んでいます。そして、人形は、子どもたちが自由に想像力を働かせて「ごっこ」遊びを楽しむことができます。授業はもちろん休憩時間にも、人形を手にとって、お医者さんごっこをしたり、自分の子どもや弟妹に見立てて抱っこして、子守唄を歌ってあやしたり、服を着させてあげたりと、お世話をしている様子が、どの幼稚園からも聞かれました。
IMG_5628 人形.JPG   布ボールや人形で遊んでいると家に帰りたくなくなって、ずっと遊んでいたいという子どもたちも少なくありません。「先生、家に持ち帰って遊びたいの。いいですか」と保育者にお願いにくる子どもたちもいます。

遊具を通して伝わっています 幼稚園の先生方に、布ボールや人形で遊ぶにあたって、気を配っていることはありますかと質問をすると、まずなによりも、子どもたちが遊具をお友達と譲り合えるように、という声がたくさんあがりました。それから、ボールを使っているときは怪我をしないよう安全に配慮したり、もし子どもたちが危険な遊び方をしていたら、声をかけて別の遊び方を提案することもあると言います。
  子どもたちはというと、そんな先生方に見守られてのびのびと遊びながら、「僕たちは譲り合わないといけないよ。友達なんだからね」とか、「(人形やボールが汚れないように)遊ぶ前にみんなで手を洗ってこよう」などと言って、自分たちで行動に移しているそうです。また、遊具は、遊び終わると子どもたちが棚に戻しますが、そのときに、「私たちはお人形を粗末に扱っちゃだめなんだよ。元の場所にもちゃんと戻してあげなくちゃ。先生はお仕事がたくさんあるから、私たちみんなで先生を手伝おうよ」と言ってくれたり、戻したあとに、「先生、私は『良い子』でしょう?元のところに戻したよ!」と嬉しそうに先生に伝えに来る子もいます。遊具との触れ合いを通して、先生の思いも自然に子どもたちに伝わっていて、社会性なども育てられているように感じられます。

布ボール・人形の意義
  最後に、布ボールや人形が子どもたちにどのように役に立っていますかと問いかけてみました。ボールは、布製なので身体に触れても痛くないというのがまずもって良いとのこと。子供たちも、「このボールは、当たっても痛くないから、とっても嬉しい。お友達と遊んでいて当たってしまっても痛くないもの」とお話ししてくれるそうです。それから、ボールで身体を動かすことによって筋肉を鍛えることができるのも、子どもたちの成長にとって大切な点だと言います。実際、5歳児になると、子どもの体力や成長を測るテストがありますが、日頃から布ボールで身体を動かしている効果を、そのテストでも感じ取ることができるそうです。
  人形については、日常的に触れてお世話をしたり、「ごっこ遊び」をしたりするようになってから、それまであまり話さず、何をするにもなかなか勇気のでなかった子どもに変化がみられるようになったという話もききました。さらには、人形を使って日々の習慣について学ぶことで、子どもたちが自分たちで意識して実践できるようになってきているようです。


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