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都市貧困層、家庭訪問調査

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「生活が心配」涙で語るお母さん

「生活が心配」涙で語るお母さん

地雷に被災したお父さん

地雷に被災したお父さん

子どもを引き取ったおじさん

子どもを引き取ったおじさん

このままでいいはずがない

このままでいいはずがない

「心配なことが多すぎる
考えたって仕方ないよ」

-都市貧困層、家庭調査インタビュー回答より-


華やかな建設ラッシュの影で深刻化するカンボジア首都プノンペンのスラム問題。
CYRは、この地域で活動を開始するため約200軒の家庭調査を実施しています。
調査からみえた人々の厳しい生活実態をカンボジアスタッフの山極がお伝えします。


プノンペン市ルセイケオ郡に位置するルセイケオ地区・第6キロメートル地区(以下R地区)と、プノンペントメイ地区(以下P地区)。ここはカンボジアの都市部です。CYRは、この2地区でそれぞれ保育所支援と小学校建設などを行ってきました。そして、この1年は、都市で生活する子どもたちの家庭状況を詳しく知り、今後私たちはどんな支援ができるかを考えるため、約200軒の家庭状況調査(以下調査)を続けています。


郡は同じでも、2地区には違いがありました。R地区には長く住んでいる方も多く、にぎやかな下町の雰囲気がありますが、P地区には、プノンペンに700ケ所もあるといわれているスラムから追い出されて来た人も多く住んでいます。ここは、市街地から離れていて仕事を見つけるのが大変です。雨期には水が溢れる路上に粗末なトタン屋根の家が約80軒、ずらっと一列に並んでいるところもあります。調査が進むにつれて、「都市に住む人々の間に増え続ける格差」ということばが、自分たちにも取り組むべき現実のテーマとなってきました。


「生活が心配」涙で語るお母さん

1993年にシアムリアプからプノンペンに転居してきた47歳の主婦の話を聞きました。家族は8名。夫は48歳、日雇労働者で日収210円です。しかしこれは必ず毎日入るとは限らない日雇いの収入です。雨の日には仕事が減るでしょう。最近は物価が上昇しているため、都市で8人家族が生活するには、食べるだけでも最低約3万円くらいが必要だと言われています。
この家には、夫の両親と16歳の長男を頭に14歳、13歳、10歳、4歳の子どもがいます。家賃は月300円で借金はありませんが、土地も家もなく生活がどうなっていくのか心配と涙をこらえながら話してくれました。ここに8人の家族が住んでいるのです。


地雷に被災したお父さん

コンポンチャム州で地雷に被災したという51歳、男性の話を聞きました。市内の中心部に住んでいましたが、追い出され、1993年からここに住み始めました。仕事は、家事の傍ら自転車、バイクの修理の仕事をしていて一日240円位の収入があります。48歳の妻は縫製工場で働いています。5人の子どものうち、3人は、外国の団体が運営する学校に通わせています。そこでは朝食も昼食もあり、文房具や洋服ももらえ、4時まで預かってもくれます。松葉杖を使って上手に移動するこの男性は、あまりに心配なことがありすぎるので考えても仕方がないと笑いながら話してくれました。


こんなやりきれなくなるような調査の中にも、感動的な話がいくつかありました。


近所の人に支えられる一家

おじいちゃん76歳、おばあちゃん69歳、孫10歳と14歳の4人暮らし。2年半前、娘家族が近所に住んでいましたが、離婚して娘も子どもをおいて家を出て行ってしまったそうです。収入は全くないけれど、なんと近所の人が助け合って支えてくれているというのです。ゆとりがあっての行為ではありません。


子どもを引き取ったおじさん

 ある家では、16歳の中学2年生の男の子がインタビユーに答えてくれました。家族は6名で父と母は数年前に相次いで、エイズで亡くなりました。妹は8歳、11歳、13歳でみんな学校に通っています。叔父さんは独身で、建設現場で働いていますがこの子どもたちをすべて引き取ったようです。おばあちゃんは63歳で花や手巻タバコを売って、僅かですが収入を得ています。この日、8歳の妹は、花売りを手伝っていました。このきょうだいの表情をみていて、留守だった叔父さんやおばあちゃんに会いたくなりました。


ボールに頬ずりするお母さん

ある日、インタビユーに答えてくれたお礼に、少しのスナック菓子と色とりどりの布を8枚組み合わせて中に綿を詰めて作った布のボールを差し上げたとき、泣いていたお母さんから笑顔がこぼれ、頬ずりしながら、いとおしいものに触れるように大切に持ち帰ってくれたことも印象的でした。


このままでいいはずがない

今日、仕事があるかどうか分からない、病気になっても病院へ行けない、トイレで用を足せない、学校へ行かせたくても行かせられないなど、その日その日をどうやって食べていくのかを考えるので精一杯なこの地域の人々と同じ状況に、私自身が置かれたことを考えてみましたが、想像すら難しく、とても受け入れられない程厳しいものでした。でも私たちを迎えてくれた人々は、このような状況を受け入れながら、はじめて会った私たちに、ある人は笑顔で、ある人は涙して話してくれました。そして全く収入のない近所の人をその中で支えて暮らしています。驚きの連続でした。でもこのままでいいはずはありません。調査を行う度に、力が抜けてしまいそうになりながら、私たちにできることは何かを考える毎日でした。


新たな食と教育支援の開始

CYRは、R地区ではパートナーである現地NGOケマラとともに、これまでの経験を活かして新たに2ヶ所の地域保育所を支援することにしました、また学校建設をしたP地区ではそこに通う約500名の子どもたちを対象に朝食支援を開始します。実施にあたっては、ほんの少しずつでも地域の方々から給食費の納入を呼びかけます。しかし、とてもそれだけでは困難な状況です。
どうかこの新たな取り組みにみなさまからの更なるご支援を今後ともよろしくお願いいたします。

2007年7月30日


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