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マンゴのはなしと食品ロス

 私が長い間暮らしていたカンボジアでの楽しみは、なんといっても南国のフルーツ。マンゴの季節には、プノンペンの市場でも、幼稚園のある田舎の市場でもどこでもたくさんのいろいろな種類のマンゴが道端に山盛りで売られています。
 カンダール州の公立幼稚園の巡回研修をしていた2006年のころでした。ロビンアエムという島を日本人の保育専門家、カンボジア人の保育事業調整員と一緒に訪れた時のことです。島を横断する通りの両側に一面マンゴの樹が植えてあり、車の中からも手を伸ばせばたわわに垂れ下がっているマンゴの実に届きそうでした。私たちは、興奮して幼稚園に到着するまでの車の中は、マンゴの話でもちきりでした。その日は州の幼児教育事務所の責任者の紹介もあり、村の食堂で地元でとれたお魚を揚げてマンゴと一緒に頂きました。訪問した幼稚園の先生も畑でマンゴを作っていて、とれたてのマンゴをたくさんいただいて帰りました。船着き場の近くには、積み上げられたプラスティックケースに入ったマンゴがたくさん並んでいて、プノンペンの市場で商売をしている人が取りに来るとのことでした。こんなにおいしいマンゴを加工して外国に輸出できたらどれだけカンボジアの人たちの収入になるだろうかと思ったものでした。

 カンボジアのように一年を通して暑い気候の農村では、収穫した作物を保存する冷凍・冷蔵施設がなく、また加工施設や加工技術もないので、作物の品質を保つことができず、最盛期にはとても安く売らざるをえない、悪くなってしまったものは、廃棄することもあるということでした。このような食品のロスは、収穫されても商品にならないものや貯蔵や輸送、加工、販売の段階で品質が損なわれたもの、消費するときにも食べられなかったものなどいろいろな段階で起こります。

最近、近くのスーパーマーケットで加工されたカンボジア産のドライマンゴを見つけました。清潔な設備の工場の製造過程の写真入りのパックを見ると大量に生産し日本に輸出することができるようになったのだと感激して数パックを購入しました。でも3回目に買いに行ったときには、全部売り切れ、そのあとの入荷はありませんでした。
食料自給率の低い日本には、今世界中からたくさんの食料が輸入されています。中国や韓国はもとより、ニュージーランドのかぼちゃ、チリ産の鮭、オーストラリアやアメリカの牛肉等々が並んで日本で作られたものを見つけるのが大変なほどです。これらの生鮮食料品を世界中から輸入し運搬するには、たくさんの温室効果ガスを使って日本の私たちの食卓に上ることになります。
カンボジアと違い食料品の流通のシステムができている日本でも食事の食べ残しや、賞味期限が過ぎたからといってたくさんのまだ食べられる食品が廃棄されています。農林水産省の2017年度の統計によると一年間で612万トンにもなるそうです。そのうち家庭から出される野菜くず、商味期限切れなどの食品は284万トンと多いのに驚きます。カンボジアでは、レストランで食事をした時に残ったものがあれば、ほとんど持ち帰っていました。農村の幼稚園や家でも食事の片付けをしているそばで米粒や魚の骨等のおこぼれを拾う犬や鶏をよく見ました。日本でまだ食べられるものを大量に捨ててしまう場面に出くわすたびに不公平さを感じていました。
私たちの毎日の暮らしの中で食料の無駄や捨てる量を減らす、食べられるものを捨てないための工夫がたくさんあります。食べるものを捨てることがないようにおいしく食べきりたいものです。野菜や魚の新鮮なうちに下ごしらえをする、調理して冷凍にしておくなど、食材を必要な量だけ購入し食べきること、そして食べすぎないようにすることも大事にしたい事です。 食べることは命をつないでいく、生きていくうえでなくてはならないものです。
カンボジアでもお腹いっぱい食べられない子どもがたくさんいます。食べ物を食べきることなく捨ててしまうのは世界中の資源を無駄にしてしまっていると同時に食べられずに生きのびられないような状態の世界中の子どもの食べるものを捨ててしまっていることにもなります。
関口 晴美

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