村の幼稚園ができるまで~カンダール州キーンスバイ郡スダオカンラエン・プラム村の幼稚園~
2015年11月2日にカンダール州キーンスバイ郡に、新しい「村の幼稚園」が開設しました。「村の幼稚園」とは、一人でも多くの子どもたちが幼児教育を受けられるようにと、CYRが独自に開設、運営支援を行う幼稚園です。スダオカンラエン・プラム村の幼稚園開設に当たっての事前調査から場所の決定、幼稚園の開園式に至るまでをお伝えします。
【幼稚園開設のための事前調査と準備】
村の幼稚園開設にあたり、当会カンボジア事務所(CYK)職員は何度も村を訪れ、村人へのヒアリングやニーズ調査を行いました。その中で今回スダオカンラエン・プラム村が開設候補地に選ばれた大きな理由は、①村の人々が協力的で幼稚園の設立を強く希望している、②村の小学校に空き教室があり幼稚園として利用できる、③幼稚園の先生として働く意欲のある立候補者がいることでした。
開設場所が決定すると、いよいよ開園準備です。
村の幼稚園は、CYKではなく地区が主体となって幼稚園を運営、4年目以降は村人が自主運営をする幼稚園です。そのため、4年目以降の運営を担う「村の幼稚園運営委員会」を組織して一緒に協力してもらうことが大切です。委員会のメンバーには、地区長や村長、地区評議会、小学校の校長先生、村の寺院の僧侶など多くの人が参加し、彼らを中心に運営をします。
運営委員会のミーティング
また、幼稚園の環境整備も重要です。しかし村の幼稚園として利用する小学校のトイレ設備は古く壊れていたうえ、教室から離れた場所にありました。そのため、新しくトイレと井戸を建設し、幼稚園となる教室の掃除や飾り付け、必要な備品や教材、遊具を揃えるなどして、開園に備えました。
新たに建設したトイレの外観
トイレの内部
新たに建設した井戸
10月19日~22日にかけては、CYK保育アドバイザーによる保育者研修が行われました。実際に幼稚園として使われる教室で、幼児教育の重要性、保育者の役割、保育の仕方、保護者との関わり、子どもの衛生状態の確認、そして教材の製作方法など多くの事柄について研修が行われました。研修の開会式には当会職員、運営委員会メンバーが出席し、幼稚園設立に向けての抱負や意気込みが語られ、幼児教育への期待や大切さを再確認する場となりました。
保育者研修の様子
【幼稚園開設 開園式】
11月2日に開催された開園式には、23人の園児とその保護者、村人が出席しました。幼稚園ができる前までは子どもたちは小学校の授業に一緒に参加する子どもも多く、授業の内容がわからなかったり、途中で泣き出す子供も少なくありませんでした。一方家にいる子どもは自由に食べたり寝たりしていたということで、新しい友達を作ったり、文字や歌を覚えたりする機会はほとんどありませんでした。
郡の幼児教育担当者や先生の話に熱心に耳を傾けている保護者たちの様子から、子どもたちに幼稚園で教育を受けさせることへの期待が感じられました。教室の壁や天井には、保育者が研修で作成した様々な掲示物が飾られ、人形やボールなどの遊具、絵本が用意され、明るい雰囲気となりました。園児たちの多くは4~5歳ですが、3歳児2人、6歳児1人も一緒に入園しました。園児の中には自分でいすに座ることができない子や緊張から終始泣いている子もいましたが、ほとんどの園児が大切そうにお人形を腕に抱いたり、ボールや絵本で遊んだり、先生が教えてくれる手遊びを一生懸命に真似したりと、楽しい時間を過ごせたようでした。開園式が終わると、保護者や村人は、先生やCYKスタッフに元気にあいさつをし、帰っていきました。
教室内の様子
スダオカンラエン・プラム村の幼稚園が子どもたちにとって、集団生活に慣れ、友達と仲良く遊び、学べる場所となるように支援していきます。